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    2021.6.7カテゴリー: 店主のブログ

    オヤジの墨。    令和3年6月6日

    今日は工房がある地元の潮田神社の例大祭です。

    横浜の下町のお祭で町内会の数も多く、毎年盛況なのですが、昨年と今年はコロナ禍でお祭は自粛です。

    でも、潮田神社の大型の本宮神輿が車に載せられて渡御される事になったのです。

    私は、西神奈川店を開けないとならないので、渡御は見ることが出来ませんでした。

    私は、インスタグラムに私の書や写真をアップしていまして、凡そ30年前に今は亡き父、宗一が川崎のデパートの催物売り場で購入して来てくれた墨で書を書いてみる事にしたのです。

    この墨は最後の型取りをする前のもので、その工程を省いているので、少し安かったと思われます。

    墨の値段は量が多い方が割安というのでなく、グラムで値段が決められています。

    宗一は時々、欠けたりした特価の墨を買ってきてくれていました。

    歳月が経ったこの墨は、まだ麝香系の香りを放っていますが流石に硬いです。

    墨は作製から年数を経た方が墨色が良いのです。

     

    工房がある町内会の神輿は、この亡き宗一が宮師として作製したもので、今でも精彩を放っています。  コロナ禍の今日・・・宗一の神輿は表に出て担がれる事がなく、この神輿をひ孫達に見せる事も出来ないのです。。

    この祭りの日・・・私は保存していた、宗一が買ってくれた墨で書を創作することにしたのです。

    この墨を摺り、麝香の香りに包まれ、墨は筆から出て線となり、この一連の作業を通して、思わぬ亡き宗一との邂逅ができました。

    頑固な宮師だった宗一を思いながら産まれた作品を、果たして、宗一は喜んでくれるだろうか?

     


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